捨て猫だった「くう」の話6

その年も終わる12月の終わり、また外に出てしまっていつもはご飯の頃には、帰ってくるのに、とうとう帰って来ませんでした。
心配しながら、あちこち探しても結局見つからずあきらめて朝まで待つことに、朝ごはんには帰ってくるだろうと思っていたら、その日も帰らずそれから4日たちました。
あちこち探しても見つからず、もうだめかもと思ってすっかり落ち込んでいた。
とうとう大晦日が来て、一緒に年越せなかったねとすっかりあきらめていました。
年が明けて、元旦の朝早くに「にゃあにゃあにゃあ」と玄関のドア辺りから声がします。
大急ぎでドアを開けると、そこには弱々しいくうがいました。
「良かった生きてた、よく帰ってきたね」どこかに入り込んで出られなくなっていたのだろうか?
「何日も食べずに寒かったろう、本当によく帰って来てくれてありがとう。」
小さい体がまた一回り小さくなったようです。
あれから8年、相変わらずしょっちゅう脱走するくう、人間にはあまりなつかず、つんでれなくうです。
最近年をとってきたせいか、すりすりして甘えるようになって、ますます可愛くなってきました。
でも人の上を歩き回るのも愛情表現なの?
甘がみも?抱くといやがるのも?
小さい体だけど、態度は大きいんです。
これからもこんな時間が続いていきますように。
ずつとは一緒にはいられないだろうけど、最後まで一緒にだよ。
「くう大好き。」
終わり

捨て猫だった「くう」の話5

くうは、1ヶ月過ぎる頃にはもう一人であちこち歩きまわるようになり、なんだかハルが淋しそうです。
えさもよく食べるようになり、おしっこも覚えてくれて本当に良かった。
けれど体はまだまだ小さいです。
それから、外で過ごしたからかすぐに外に出ようと、いつもドアを開ける時や窓を開けていると、すぐに出ようとするので困る。
そして時々、脱走に成功するのです。
人の心配をよそ目に隣の植え込みの中や、よその家のベランダにちゃっかり昼寝とかしています。
時々よその猫と出くわすと、もう大変
「いきり立って」にゃーごぉーにゃーごぉーと威嚇と言うより、恐れで鳴きまくってずっとその猫が立ち去るまで鳴き続けている。
助けてやれる場所ならいいけど、よその家の中だと本当に近所迷惑になるくらい、大きな声で鳴き続けている。
でもやっぱり外に出たいらしく、脱走はずっと続いていくのです。

捨て猫だった「くうの」話4

どんな名前にしようかといろいろ考えるけど、その真っ黒い体、金色のきれいな瞳、最初にくうちゃんと呼んだので、もうくうちゃんとしか思いつかない。
そんな訳で名前はくうになった。

連れて帰ったら犬がいるので大丈夫かと思ったけど、犬のハルはすごくうれしがってすぐにクンクン臭いをかぐと、ペロペロ舐め始めた。
くうは日に日に元気になっていった。ミルクもよく飲んだ。
多分生まれて1ヶ月はたってるよね、二、三週間すればえさも少しずつ食べれるかね、それからおしっこをする場所作らないと。
そんな心配をしていると、最初にお話したようにハルがずっとそばにいて、お母さんがわりをしてくれたので、本当に助かった。
今さらながら、動物の本能や愛情 本当に頭が下がります。

捨て猫だった「くう」の話3

弱って動けなくなって体も冷たくなっている。
あわてて 持っていたタオルで拭いて手で暖める。弱々しい声でにゃあと一声鳴く。
涙が出てくる。
こんな降りられない所に誰が置いたのだろう。
子猫を捨てた人なのか、それとも子猫を
捕まえてわざとトラックの荷台に置いたのか?
そんな事が頭をよぎるが、今はとにかくこの2匹の子猫を何とかしなくては。
最初のミルクを飲んだ子猫の方は、割りと元気ですぐに落ち着いた。
でも、もう一匹の子猫は衰弱がひどく、ミルクもほとんど飲まない。
毛を拭いてタオルでくるんで暖かくして、家に連れて帰る。
毛布にくるんで暖めて、ミルクをスポイドで飲ませてみる。ほんの少ししか飲まない。
手のひらでくるんで暖めるけれど、体はなかなか暖かくならない。
そのうちだんだん体は冷たくなり、とうとう動かなくなった。
それでも、ずっと手で暖めてみる。数時間後体が硬くなっていのがつたわってくる。
死んだとなかなか認めたくなくて、次の日までタオルの上に寝かせて様子をみていた。
次の日にやっと諦めて丁寧に見送った。
けれどもう一匹の子猫は、びっくりするくらい元気になっていった。

捨て猫だった「くう」の話2

小さな体で必死に鳴いていた。捕まえようもすると怯えて棚の奥の方に入り込んでなかなか捕まえさせてくれない。
困って近くのコンビニで、ミルクを買ってきて水道の所にあった小さな皿にミルクをいれて置いて、出てくるのを待った。
しばらくすると、お腹が減っていたのだろう、そろそろと出てきてミルクをのみ始めた。
そっと近づいて、やっと捕まえさせてくれた。
貰ってきたダンボールにミルクも入れて、そっと置いてやる。
棚の下にでも入っていたのか、あまり濡れてない。
その棚の奥の方に、もう一匹雨にびっしょり濡れてぐったりした黒い子猫を見つけた。

捨て猫だった「くう」の話1

くうは、犬のハルの腕の中ですやすや眠っていた。
ハルはくうがやって来て、オス犬なのに、すっかり母親がわりになって、毎日くうのそばから離れようとしない。
ずっとくうを守って、おしっこもうんちも全部舐めてきれいにして、ミルクを飲ませる時もくうを貸してくれなくて困った。
それほどハルはくうの母親がわりをしてくれていた。

あれは6月の雨が朝から降っている日だった。
主人が仕事から帰ってきて、今日会社のトラックの荷台に子猫がいるみたいだと言った。
「こんなに雨が降ってるのに大丈夫?すぐに様子を見に行ったほうがいいよ」
それからすぐにまた会社に 戻ってみると、雨が降っているトラックの荷台から、「にゃあにゃあ」鳴き声が聞こえてきました。
トラックの荷台には、荷物を置くための棚が取り付けてあって、その隅っこの方に真っ黒い猫が「にゃあにゃあ」鳴いていた。