捨て猫だった「くう」の話1

くうは、犬のハルの腕の中ですやすや眠っていた。
ハルはくうがやって来て、オス犬なのに、すっかり母親がわりになって、毎日くうのそばから離れようとしない。
ずっとくうを守って、おしっこもうんちも全部舐めてきれいにして、ミルクを飲ませる時もくうを貸してくれなくて困った。
それほどハルはくうの母親がわりをしてくれていた。

あれは6月の雨が朝から降っている日だった。
主人が仕事から帰ってきて、今日会社のトラックの荷台に子猫がいるみたいだと言った。
「こんなに雨が降ってるのに大丈夫?すぐに様子を見に行ったほうがいいよ」
それからすぐにまた会社に 戻ってみると、雨が降っているトラックの荷台から、「にゃあにゃあ」鳴き声が聞こえてきました。
トラックの荷台には、荷物を置くための棚が取り付けてあって、その隅っこの方に真っ黒い猫が「にゃあにゃあ」鳴いていた。